第98回【長野県】八方池に現れた白虹を切り撮った写真の話

僕は今、八方池の目の前にいる

早朝の視界の悪さはどこへ行ったのか?

まあ良い、

良い方に転んでくれたんだから

風もなく空は晴れ渡り

八方池の水面は見事なまでの鏡張りだ

周りにいる人達や次々訪れる登山客達からも

黄色い歓声が聞こえてくる

それは完璧な光景だった

そんな折、

無風だったこの場所に何処からか風が吹いてくる

すると

水面には波が経ち始め

今まであったシンメトリーの絶景は

いとも容易く消え失せた

落胆の声が響き始め

僕も同時にガックっと首を落とす

かと思えば今度は、

ものすごい速さで雲が左から右へと流れてきた

あっという間に視界は閉ざされ

数秒前に見えていた山々も隠されてしまった

僕の目の前は、今、真っ白だ

さっきまで彩られていた景色は今や真っ白

何も見えない

ミスト状の水滴が僕の顔を濡らす

うぅぅぅぅ〜む

待つしかないか…

幸い時間はいくらでもある

この雲が流れ、

消え失せてくれるかは分からなかったが、

とりあえず待つこととした

待つこと数分

意外にもその時は早く訪れる

真っ白だった景色の奥に青みが見えてきたと思えば

うっすらと徐々に山並みも見え隠れし始める

僕の後ろからは

雲の間を縫って太陽の温かい光が感じられる

「もう少しで雲は流れまた晴れ渡るな」

そう思った矢先

目の前に白虹が現れた

雲は完全には抜けていなかった

霧の細かい水滴が太陽光に反射し現れる現象

ここ、八方池で見られるのは非常に珍しいと言う

気付けば八方池の水面は

また静まり返っている

ガシャり!!

僕はこんな光景に出会えた事に

感謝の念を込め静かにシャッターボタンを押し込んだ

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